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今回、日本館の展示にあたって提示されたテーマは、「20世紀の総括と21世紀の展望」でした。それをぼくなりに考えてみると、20世紀とは大量の死を生みだしてしまった時代ではないかと思った。「メガ・デス」です。そこで、発光ダイオード(LED)のカウンター・ガジェット(数字を1から9までカウントするデジタルの表示機)を2400個、壁三面にはめ込んで、ある特定の場所に人が来たときに一瞬真っ暗闇にする。しばらくして再び点灯し始めるという作品を展示しました。数字はそれぞれ違ったスピードで刻まれており、人間のライフサイクルを表しているのですが、ある瞬間、人為的なものによって遮断されてしまう。大量の死というものを暗闇で表現したわけです。 一階部分は三年前から始めた「柿の木プロジェクト」を展示しました。長崎で、被爆した柿の木の二世の苗を育てている樹木医の海老沼先生がいるのですが、それをアートとしていろんな所に植樹できないだろうかとユニットを作り活動していたのです。今回は、柿の苗木を展示して植樹先を募集するという形にしています。これは、ぼくの作品でもあるし木を育てた子供たちの作品でもある。でもそれだけでもない。柿の木を媒介にした人間のアクションがつくりあげたものなのです。ひどく境界が曖昧なプロジェクトですが、これを21世紀への展望にしようと思った。LEDで「死」を見せて、こちらを「蘇生」という切り口にしたわけです。
今回のビエンナーレを見ても感じることですが、18世紀頃以来の西洋美術史の延長線上にある現代美術が、ある限界点に達しているような気がします。それは、一口で言うと「マッチョな世界」です。非常に物質主義的で経済主義的で、力こそ全て、という考え方。力というのは美しさや強さでもあるのですが、その美しさとは、見えないものはないという考え方だと思うのです。あるいは密やかなものとか柔らかいものが抹殺されてしまう世界。人間不在の絶対的な空間と時間が存在しているという幻想がそこにはある。しかし、本当は人間こそが空間と時間を生み出すわけです。だから人間の生活自体や形にならないものも大事なんじゃないか。それが排除されてきたから、行き詰まりが生じているのかなと思うのです。 そう考えるきっかけになったのが「柿の木プロジェクト」でした。この特徴は、アイデンティティが不在だということ。言ってみれば、コンピューターのOSみたいなものです。これは、「やせ犬」などで知られている作家の藤浩志君が提唱している言葉で、アーティストはオペレーション・システムをつくるというわけです。コンセプトの土台の部分をつくって、それを一つのアートの形として提示すると。ユーザーはそのOSに基づいて「柿の木」とか「被爆している」といったパスワードを使って何かをつくるわけです。使ってもらわないと何も生まれない。つまり、いかに人を引きつけるOSをつくれるかがアート足り得るかどうかなのだろうと思います。これはメディアで扱えるものではないのかもしれませんが。そこにたたずむ人間にとってはリアルな価値を持つわけです。 この「メガ・デス」と「柿の木プロジェクト」は。一見すると違っているように見えるのですが、コンセプトは同じです。「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」ということがぼくの作品の一貫したテーマなのです。数字のカウンティングは時間と深く結びついていて、個々の時間をどうセッティングするかで空間が変容するというものです。そこに人間という観客が入ってきて別の時間が導入されることで、またさらに空間が変容していく。鑑賞者の持っている時間と空間が作品に反映されるのです。 面白いのは、「柿の木プロジェクト」を始めたことでLEDの作品も変わってきたということ。以前は自分が全てをコントロールしようとしていたのですが、コントロールなんかできるもんじゃないと解って、自分以外のものに委ねるようになってきました。例えば、カウントのタイミングを他者に委ねるようになってきました。例えば、カウントのタイミングを他者に委ねる。当事者が好きなリズムに決めることができれば、作品との関係がもっと深まるわけです。また、埼玉県立大学ではカウンターをはめ込んだ壁面を鏡にしました。その前を通ると、もう一つの空間が現れてそこには別の時間が刻まれているわけです。自分はここまでのお手伝いをします。後はみなさんでやって下さいという感じに変わってきた。予測不可能な部分が怖くもありますが、面白さにもなります。 今までのアートはブツとして「どうだ!」と出して、お客さんが「ありがとうございます」と応える関係だった。ぼくが今興味があるのは「使ってなんぼ」という世界です。柿の苗木を植えたいという申し込みが、世界から50ヶ所以上来ています。アートとしてOSをどうつくっていくかもう少し整理して、来年2月水戸芸術館で展示しようと思っています。(談) |
| GA JAPAN 49号より | ||
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| WORK>PROJECT > "REVIVE TIME" KAKI TREE PROJECT | ||