TEXT > CONCEPT OF WORKS > LUNA
6 / 1994
宮島 達男
LUNA 1994
人類が、時を測りはじめてどのくらいたったのだろう。
日本においては水時計の歴史が古く、『日本書記』に「初めて漏刻を造る。おおみたから民をして時を知らせむ」との記述がある。7世紀のことである。時間を測るのは、自然の力を使うことが多かったようだ。そして天文学によってより正確な時間を測れることになる。月も時間を測る重要なファクターになっていたことはよく知られる。
人類が時間を測っているうちはよかったが、時間が人類を測りだしたのはいつ頃からだろう。
初めて機械時計が出現したのは13世紀末、ヨーロツパに於いてであるといわれる。そして14世紀中頃、イタリアのパドバに公共時計が設置される。さらに、15世紀機械時計がヨーロッパに普及し、定時法が採用される。このあたりから、人々の労働や生産が、時間によって測られるようになったと考えられている。現在では、私達のまわりに時計が満ちあふれ、私達を常に監視し続けているように思われる。

私は時間をテーマにして「Luna」を考えた。
私の時計は、ばらばらの時間、144個から構成される。それは、デジタルな数字で、1〜9までカウントし、また1に戻って繰返す。そして”0”は表記されない。カウントするリズムは、1/10秒の速いものもあれば、1時間に1つしか進まない非常に遅いリズムのものもある。
1884年、イギリスのグリニッジ天文台に”0”の子午線が設置され、地球の時間が便宜上統一された。しかし、物理学、数学の発達により「時間」は単独に存在する不変のものではないことが明らかになってきた。時間は人間の観測に不可分で関係している。
私の作品は、観る人々の内的時間と対応している。それは観る人々がいて、はじめて成立する時間なのである。私は、様々な個性をもつ一人一人の内時間の総体がほんとうの「時間」ではないかと考えている。その意味で、この作品は、鏡のようなもので、観る人々の内時間を写しだす装置であるといえよう。
「Luna」とは英語で月のこと。月はまた自ら光る恒星ではなく、太陽の光を反射する鏡なのである。
私はこの作品を、夕方から夜にかけてだけ見せようと思っている。
なぜなら、昔の人が月を見て、時に想いを馳せたように、本当の「時間」を想うのには、夜の暗闇が最もふさわしいからである。
 
WORK> PORTFOLIO > 1990-1994> LUNA