TEXT > CONCEPT OF WORKS > Fortress Of Human Rights
Fortress of Human Rights
1997
ジュネーブは国連を中心にした「国際的なコンファレンスの地」として良く知られています。このような「国際的コンファレンス」または「コミュニケーション」は「世界の人権」という観点から重要な意味を持っています。
事実、1948年にパリで採択された『世界人権宣言』も、最初の話し合いはジュネーブからはじまったのです。私はジュネーブが「人権」「コミュニケーション」との関係が深い街であると考えました。
また、今回のプロジェクトを実現するジュネーブ大学の前身はカルヴァンが創設した「コレージュ・ド・カルヴァン」です。カルヴァンは人間を金もうけの道具としかみない「免罪符」を批判し、宗教を人間の手に取り戻しました。彼は「宗教のための人間」ではなく「人間のための宗教」を目指しました。その思想を教えるためジュネーブ大学を創設したのです。つまり、この大学は創設当初から人間の「人権」を守る砦であったのです。
大学は教育の場です。私は教育の目的は「人間」を守るための、「人権の思想」を理解させていくことだと考えてきました。また、人間同士の「調和」と「コミュニケーション」を学ぶ場所とも思います。そのための知識であり、そのための教育だと思っています。そして、私はアートも一つの自由な教育であると考えています。だから、私は今回のプロジェクトのコンセプトを『世界の人権』と決めたのです。そして、作品をとうして、世界中から集まってくる先生や学生、そしてジュネーブ市民一人一人に「人権の思想」をもう一度考えてもらいたいと願っています。
今回の「Counter Gadget」は、ジュネーブで特別に作られたものです。この「Counter Gadget」は表面が鏡になっていて、昼間は大学の周りの環境を映し出し、町を歩く人々の視点によって様々に変化するでしょう。このことは環境と人間の「調和」や「コミュニケーション」を暗示しています。
また、夜になると光の数字が時を刻みはじめます。時を刻むスピード(リズム)は、抽選で選ばれたジュネーブ市民やジュネーブ大学の関係者222人によって自由に設定してもらいます。つまり、222人の作った個性あるリズムが UNI Dufour のビルで永遠に刻まれることになるわけです。「Counter Gadget」は赤色と緑色の2色を使います。赤と緑は補色で「対立」や「違い」を象徴している。この2色を使うのは、「対立の調和」を暗示させたいからです。これは、明らかに「人間的差別」に対する強い批判です。
これら220個の「Counter Gadget」の一つ一つが一人の『人間の生命の輝き』を現代的に表現しています。
ジュネーブ市民によって自由に設定された「Counter Gadget」は、まるで一人一人の「個性の輝き」になるでしょう。ジュネーブの人たちの「命の煌き」になるでしょう。その輝きはまさに「人権」を保証された人間の美しさであるでしょう。そして、それら220個のカウンターが取り付けられた大学の建物全体で宇宙の交響曲のようなハーモニーを奏でるのです。それは、まさに「人権の思想」の勝利の歌になるでしょう。
エマニュエル・カントは「実践理性批判」の中で次のように述べています。

「感嘆と崇敬の念で心を充すものが二つあるそれは,わが上なる星の輝く空と、わが内なる道徳的法則とである。」

私はジュネーブ大学が、そして、そこに集まってくる人々の一人一人が「人権の思想」を「調和」「コミュニケーション」を守ってくれる事を願って、作品タイトルを「人権の要塞」にしました。
 
WORK> PORTFOLIO > 1995-1999 > Fortress Of Human Rights